3年ほど前のことです。九州大学MBAコースにおいて、富士通の人事最高責任者の方が特別講義をされました。「成果主義」という言葉が世の中をにぎわせていた頃です。
内部告発的な内容のこの著書の出版により、「成果主義」という人事評価方法への不満が一気に表に出てきたようです。成果主義の洗礼を受けていない上司に「成果を出しなさい。その成果によって昇進を決めます。」と突然言われても、多くの社員は戸惑うしかなかったことでしょう。「成果」の定義が不明瞭だからです。
著者は東大卒、人事部に在籍していた方でした。声を上げなければエリート企業人として人生をつつがなく送れたことでしょう。しかし、その恵まれた地位を捨てて、世の中にこのシステムの問題点を提起されたようです。
私は、特別講義の前にこの本が指定図書にあげられるものと思っていました。しかし、富士通の方や教授は講義ではこの本のことにはまったく触れませんでした。自社の成果主義に基づく人事システムについて、成り立ちやその利点、正当性などを語られただけでした。
この科目は必修科目でした。講義にでている学生の多くは向学心にあふれた社会人であり、企業人です。きちんと情報を与えてからディスカッションをするのがビジネススクールでのフェアなあり方ではないかと当時の私は疑問を抱きました。
大企業は社会に対して大きな影響力を持っています。利益を上げることはもちろん重要です。しかし、目先の1~3年ほどの利益を上げるだけを目的にしていくと、どうしても人をモノのように扱う傾向になりかねません。人は育ちにくくなります。そのツケがきっと回ってくるのではないかと危惧もしていました。
真面目に努力をしようとしている若者たちが希望をもって働き続けられる雇用環境を早急に作って欲しいと願っています。企業人としてだけでなく、家庭人としての視点からも社員の生活をみることができるセンスを持ち合わせたトップが増えて欲しいものです。