材料力学 & 材料力学演習
この2冊の本は「読んでみて下さい。」といった類の本ではありません。私の思い出の本です。この2冊の本と格闘していたときの経験をお話ししたくて取り上げています。でも、書店で手に取るチャンスがあるのならば手に取ってみてパラリと中をのぞいてみて下さい。工学部でどのようなことを学ぶのか?その窓口にこの本はなってくれると思います。
九州大学工学部の学生さんの大半は必修科目としてまずこの科目の洗礼を受けます。九州大学に限らず、材料力学という学問は工学の世界において欠かすことのできない分野です。材料力学といってもピンとこないかもしれませんね。材料強度学と訳するとイメージがつかみやすいでしょう。スペースシャトルに乗って宇宙へ飛び立った若田さんもこの本を学んだのです。
インプラント治療を私の医院に導入すべきか?ずいぶん悩んだ時期がありました。今から3年ほど前のことです。症例集を見るたびに多くの疑問が頭をよぎって離れませんでした。力学的にこのような設計でいいのだろうか?いったいどのくらいの耐用年数を患者さんにお伝えすればいいのか?サポートシステムが充分といえるのだろうか?顎の骨の強度をどのくらいととらえればよいのだろう?えとせとら、えとせとら。
思いきって工学部の門を叩きました。私が相談に伺った先生のもとで講義を受けるのだと思っていましたが、なぜか、この本の著者である先生のところに私は連れて行かれました。
先生「君はなぜここに来たの?」 私 「インプラント治療システムの導入について悩んでいるのです。志望理由はここに書いています。」 書類をだそうとすると・・・。 先生「そんなものは読まんでも、もうわかった!ほら、教科書をあげるよ。」
手渡された本をめくってみると・・・真っ青になりました。物理と数学がごちゃまぜになっている・・・。工学部を卒業された方々の頭脳に驚愕しました。これが必修科目なんて。
しかし、当初の不安はすぐに消えました。とにかく新鮮な驚きと学ぶ楽しさを再確認できた1年間でした。著者の先生の強烈なキャラクターも印象的でした。痛快そのもの!なのです。
「もっとどんどん質問をせんか!外国では学生たちが先を争って質問をしてくるぞ!」 「東京のボンクラ共に負けるな!勉強しろ!(東京の方々、すみません。先生に代わってお詫びします。)」 「試験は何でも持ち込んでいい。人を連れてきてもいい。ただし、この試験を受けたことがある人間はダメだ。本や人を持ち込んだくらいでは解けない問題を出す。そうでなければ学生の君たちに教師として失礼だからな。」 「公式も覚える必要はない。計算も電卓でやればいい。アイデアが大事なんだ。企業に入ったらボクが言った意味がわかる。」 「今日は全て講義は英語でやる。」
教科書を読ませられるだけ、暗記ばかりの私の学生生活とは180度違う世界でした。大学院生の方2人が、ティーチングアシスタントとして、いつでも質問に答えるという体制ができていました。どんな初歩的な質問にも丁寧に答えて頂けました。しかも、皆さんとても礼儀正しいのです。たぶん、企業に入った後のことを考えて日頃の態度から教育されているのだと思います。
教育という観点から見たときに、よい意味で工学のカルチャーは医歯系のそれとはかけ離れていました。私の医院で「あんしん、あんぜん」をモットーにしようと決めたのも、この1年間の経験や工学部関係者の方々との出会いによるものです。
その結果、インプラント治療を私の医院で手がけることは断念しました。もし私がインプラントのオペを行うなら、どこでどのように学ぶべきかという道が見えたからです。残念ながら、その道に私はたどり着けないと判断しました。インプラントという技術自体は素晴らしいものです。使用状況さえ誤らなければ。どんなに素晴らしい技術でもそれを使おうとする人間の欲がからむとせっかく苦心して開発された技術は凶器と化すのです。過去の歴史がいくらでもそれを証明しています。その最たるものは原子爆弾でしょう。
1年間の講義を終えて、演習の単位は取りました。試験の時は久々に緊張しましたが、終わった後の爽快感は今でも忘れることができません。学ぶ楽しさ、知る喜びを感じていた私へ最後に先生がおっしゃった言葉は・・・「おつかれさま。まあ、なんか役に立つこともあるやろ。」>ブラックユーモアにあふれたお人柄でした(^^)。
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